顧客が本当に求めていること
あるサイトで1分もかからず車の査定額が無料でわかるとあったので試してみた。
サイトの登録は簡単であったが、ネット保険の見積りのように金額がすぐに出るわけではない。
登録直後から実際の買取業者から電話連絡がくるのだ。
この電話がかなり頻繁にかかってくる。
私にとっては、正直迷惑であったが、面白い体験だと思うので少し考えてみたい。
まず、こういったマッチングビジネスの概略を簡単にみてみよう。
車を売りたいサイト利用者と顧客を欲している買取業者をつなぐのが、このようなサイト運営会社だ。
売却したい人は買取業者を、買取業者は顧客を単独でそれぞれ探そうとすると、労力やお金がかなり必要となるだろう。
しかし、このようなサイトが存在すると、はるかに安い費用でお互いのニーズを満たすことができる。
そして、このようなマッチングサイトでは利用者は通常無料であり、買取業者がお金を払っているのが普通だ。
この点を踏まえて、私の体験を考えてみよう。
登録するやいなや複数の業者から連絡があったことはすでに話したが、実をいうと私はすぐに車を売却したいと思っているわけではない。
大まかな査定額を知りたい、つまり、情報の入手が私の真のニーズなのだ。
私には売却についての緊急性はほとんどないのだ。
私のようなケースの場合、このサイトは私の要求に応えていない。
とりあえず大まかな査定額を知りたいのに、サイトの中ではその情報を得られないからだ。
つまり、売却に緊急性のある人と同じように、複数の業者と電話でやりとりしなければ査定額は出ないのだ。
私は面倒なことなく査定額の大まかな情報を得たいだけなのに、それを得るため、多くの買取業者からの電話応対に多くの時間を割かなければならない煩わしさ経験するはめになるのだ(実際業者を決めたとしても、さらに面倒なことを経験しなければならないだろう)。
そんなこと言ったって、車の査定は現物を見なければできないのだから、業者に見てもらわなければ査定額は出ないと思う人もいるかもしれない。
しかし、個性の重視される美術品などとは違って、特注品でもない大量生産された普通の車の場合、売却額査定のための鍵となるファクターが存在するのが普通だ。
もちろん、鍵となる要素で査定された金額は、外観の状態や市況などにより実際の査定額は上下するが、通常の使用であれば基本となる査定額から大きく外れることはないはずだ。
私は、この基本となる査定額を知りたかったのだ。
このようなマッチングサイトの場合、売却したい人の情報が多いほど買取業者を多く集めることができる(つまり、売上を大きくできる)。
買取業者は、新規登録者(車を売却したい人)の情報が出れば、営業に熱心な会社ほど即電話をするだろう。
一方、サイト利用者はすぐにでも売却したい人もいれば、そうでない私のような人もいるわけだ。
すぐにでも売りたいサイト利用者にとっては、非常に便利だと思うだろうが、私のような利用者は逆に煩わしさを感じるかもしれない。
サイト運営会社は登録者を集めれば集めるほど売上を大きくできるので、とにかく売却を考えている人を多く集めようとする。
一方、買取業者は他の業者より早く、売却したい人にアクセスしたいので、様々な業者がそれぞれ電話攻勢をかける。
すぐにでも売却したいと考えている利用者は座っていれば多くの業者から連絡がくるので便利この上ないだろう。
ここで、置いてけぼりになるのが、いずれ売却したいと思っているサイト利用者だ。
すぐに売却したいと考えていないにもかかわらず、思いかけない電話攻勢を受けるのだ。
もちろん、買取業者の行動は合理的であり、責められるべきことではない。
サイト登録に際して、私は「1年以上売却予定はない」とチェックしているのだが、すぐに売却したい人と同じように扱われているのは不思議だ。
利用者情報の切り分けと運用がうまくマッチしていないのではないかと思ってしまう。
すぐに売却したいと思わない利用者は電話攻勢を受けると、煩わしさを感じ、実際売却しようというときにはそのサイトの利用をためらうかもしれない。
長期的にはサイト利用者の減少に直面する可能性もあるのだ。
もちろん、すべての利用者一人一人に対して個別対応することは実際上不可能なことであるけれども、「今すぐ売却したい」と「1年以上売却予定」がないを同じ扱いとするのも疑問だ。
顧客の真のニーズを知り、それぞれに適切な対応をもっと取れるのではないだろうかと思う。
なお、電話が煩わしかったので、登録を解除した。
最近減ってきているが、サイトによっては、解除が非常に面倒なところがあるのだ。
このサイトの場合、電話、といっても面倒なアンケートに答えたりすることなく、自動音声の指示に従えば簡単に解除できた。
出口をふさぐような困ったサイトは私は嫌いだが、このサイトはその点では素晴らしいと思う(この点については、こちらの記事にも書いる)。