経営者はプラス思考でなければならないか?
経営者はプラス思考でなければならないと思っている人も多いだろう。
なかには、マイナス思考を一切断ち切らなければならないと考える極端なプラス思考の人もいる。
私のような職業の場合、ネガティブな面も伝えなければならないことも多いので、こういった人に対応するのは結構大変だ。
そもそも、マイナス思考は絶対悪なのだろうか?
面白いことに、プラス思考は学問的に研究されているようだ。
アメリカの心理学者でポジティブ感情研究の第一人者であるバーバラ・フレドリクソン博士によると、
『ポジティブとネガティブの比は3:1が最も適正だとしており、ネガティブを0にするのではなく、ポジティブを3倍の量にするべき(「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」バーバラ・フレドリクソン)』
だそうだ。
この研究結果から、少なくとも何らかの成功を求めるなら、プラス思考だけでなくマイナス思考も必要であることがわかる。
つまり、マイナス思考を完全に排除する必要はないということだ。
極端なプラス思考を苦しく感じるのは、自分の思考のクセを無理に矯正しようとするからだろう(楽観的な見方をする人も心配症な人もいる)。
さらに、バーバラ・フレドリクソン博士は、マイナス思考も必要であるというだけでなく、ポジティブとネガティブの比が3:1であることが望ましいと主張する。
このような比率を示されると、心配性の人はポジティブとネガティブの思考の数を数えるようなことをしてしまうかもしれない。
けれども、この比率についてはそれほど気にする必要はないだろう。
実際、かつてインテルのCEOであった故アンドリュー・グローブ氏はパラノイア(極端な心配性)だけが生き残ると言っていた(「パラノイアだけが生き残る」アンドリュー・S・グローブ)。
グローブ氏の思考は、おそらくポジティブよりネガティブの方が多いのだろう。
思考のクセとして、プラス思考は行動につながりやすいが、反面拙速に過ぎることもあり得る(起こり得ることがマイナスと考える場合、まったく行動しない可能性がある。そもそもマイナスの多い事象が起こるとは考えないかもしれない)。
逆に、マイナス思考は慎重に吟味しことを進めることができるが、行動も慎重になるため機を逃す可能性がある。
結局、プラス思考、マイナス思考のメリット・デメリットを知り、無理にポジティブにならずに、ありのままでいればいいということだ。
経営者にとって大事なことは思考の種類やその比率ではなく、ドラッカーが言うように「行動する」ことだからだ。