富士そば残業未払問題について思う
富士そばが残業代未払い問題で揺れている。
文春オンライン:創業者は“ホワイト企業”自慢をしていたが…「富士そば」残業代未払い提訴
以前、富士そばについての記事を書いたが(「地味で安定したビジネスっていいね」)、富士そばはホワイト企業であるとみられていた。
この残業代未払い問題の詳細は分からないが、ここまでの報道を見る限り、一人の取締役の「独断」で行われていたようだ。
しかしながら、富士そばにとって、一人の取締役の独断で済む話ではなく、組織全体に関わる大きな問題と考える必要があるだろう。
なぜなら、創業者である丹道夫氏の経営哲学をないがしろにしているからだ。
創業者である丹道夫氏の経営哲学では、次の2つを守れば経営は上手くいくそうだ。
・お給料は十分に与える
・社員にはあれこれうるさく言わず、自由にやらせる
この問題により、重要な経営哲学である「(従業員に)お給料を十分に与える」は完全に裏切られたかたちだ。
なんでも当事者の取締役はアルバイトから上り詰めた、たたき上げの人物であるらしい(富士そばの取締役はそういう人物が多いそうだ)。
出世も早くおそらく仕事ができた人なのだろう。
この取締役は社内において処分されるだろうが、経営者にとっては「泣いて馬謖を斬る」ことになるだろう。
富士そばの成長を支えた人物を処分するのは経営者(現経営者は2代目)にとって辛いことかもしれないが、この問題を適当に済ますわけにはいかないだろう。
仮に社内的に軽い処分で済むなら、創業者の語る経営哲学は軽いものとなり、従業員への求心力は著しく低下するはずだ。
また、この経営哲学を真面目に実践してきた他の取締役もやってられないはずだ。
現実に出世競争がある以上、経営者の思いをないがしろにしてでも上に行きたいと思う人は出てくるものだ。
だから、経営者は徹底的に自分の思いを伝えていかなければならないのだ。
富士そばの場合、もう一つの経営哲学「社員にあれこれうるさく言わず、自由にやらせる」が悪い方に出たのかもしれない。
私は丹道夫氏の経営哲学が好きだ。
富士そばは、この問題の本質を究明、解決しさらに躍進してほしいと思う。