すしはどこへ消えた?
最近の飲食店はタブレット端末で注文するところが多い。
先日、タブレット端末で注文する回転すし店に行ったときに、興味深い経験をした。
席に着くと、私は2皿注文した。
まもなくして、注文したすしの到着を知らせるアラームが鳴った。
しかし、どういうわけかそのすしは猛スピードで私の席の前を通り過ぎていったのだ。
他の人と注文が同じになることもあり得るだろうが、それほど込み合っていない店で、2皿の組み合わせがほぼ同じ時間に一致することはそれほど多くないだろう。
と思って、端末で確認すると、私のは注文(済み)になっている。
このようなミスがなぜ生じたのだろうか?
端末のせいだろうか?
それとも従業員のミス?
確かなことはわからないが、面白いので少し考えてみた。
まず、私が端末で2皿注文することにより、調理場の端末に注文データが送られる。
この注文データに基づき、調理担当者はすしを作り、出来上がったすしをレーンにセットする。
さて、レーンにすしをセットした後、作成担当者は調理場の端末になんらかの指示を出すはずだ。
そうでなければ、自動で私の席までお皿が流れては来ないからだ。
指示は、受けた注文に対して、端末で作成担当者がOKボタンを押すことかもしれない。
しかし、このケースの場合、すしは私の前を通り過ぎないだろう。
私の席番の注文と、どこの席番にすしを届けるかの指示が一致しているからだ。
もし、このようなオペレーションで、すしが客の前を素通りするとするなら、それはシステムの誤作動の可能性が高い。
次のようなケースはどうだろう。
すしの作成担当者がレーンにセットするまでは前のケースと同じだ。
しかしこのケースでは、作成担当者が届けるべき席番を入力(タッチ)するとしよう。
つまり、作成担当者は端末で注文を確認し、レーンにセットした後、当該端末に届けるべき席番を入力するだけだ。
レーン設置後の端末画面上では、席番入力しかできないので、どの席番からの注文か確認できない(確認できるとしても操作が面倒)。
この場合は、注文した席番と届けるべき席番が紐づけになっていないので、作成担当者の思い込みで間違った場所にすしが流れていく可能性がある。
いや、作業マニュアルで席番を入力する前に注文内容を確認するように定めているから起こりえないと思う人もいるだろう。
しかし、その確認にひと手間いるなら、慣れてきたり、忙しかったりすると無視される可能性が高い。
では、二つ目のケースによって、私の注文したすしが他に流れていったのかといえば、そうとも言えない。
なぜなら、席にある端末では注文が済んだことになっていたからだ。
違った席番号の指示を出すことはあり得るとしても、その場合は私の席にある端末に注文済という表示は出ないはずだ。
とすると、誤作動なのか?
詳しいオペレーションを知らないので真相は私にはわからない・・・。
お腹も満たされたので会計だ。
端末で会計ボタンを押し、自分の注文内容と一致しているのを確認した後、入店時に発行された席番号のシートをレジに持っていき精算すれば会計は終了だ(これが通常のフローのようだ)。
しかし、私の場合は注文皿数と食べた皿が違うので、この通常のフローで会計を済ますことができない。
また、当たり前のことだが端末で誤った注文を消すこともできない(こんなことができたらお客さんのなかには不正なお会計をする人もいるだろう)。
ということで、私の場合は店員さんを呼んで会計をすることになった。
もちろん、正しい金額を払ったので私に損失はない。
これで万々歳かといえば、そんなことはなく、お店は確実に損をしている。
つまり、私の注文した2皿を他の誰かが食べて、その人はおそらくその2皿分について会計していない。
なぜなら、その2皿は私の席にある端末に表示されており、私の代わりに食べた人の端末にはその注文は表示されていないはずだからだ。
かつては、店員さんを読んで注文皿数(データ上の皿数)とテーブルの皿数(実数)を店員さんが確認後、伝票が発行され、会計していた。
コロナ禍で人との接触を避けるがために、今のようなシステムになったのだろう。
以前のシステムでは、お客が注文した数量と食べた数量の一致を店員が確認するため、今回のケースのようなお金のとりっぱぐれはお会計の段階で防げた。
しかし、私に生じた今回のケースは今のシステムではなかなか防ぐことは難しいだろう(多く食べたお客さんがすべて正直ものとはかぎらない)。
新しいシステムを導入すると(ソフトウェアだけでなく、組織上の仕組みなどを含む)、すべて上手くいくように感じてしまうものだが、完璧なものは存在しない。
したがって、小さなミスも拾い上げ原因を探る必要があるだろう。
経営者は、その2皿分の利益を回収するために何皿余分に売らなければならないかよく考える必要がある。