やらぬ後悔よりやる後悔!?

住友生命のCMで「行動非行動の原則」が取り上げられている。
「行動非行動の原則」は、行動経済学における知見の一つであり、簡単に言ってしまえば「やらぬ後悔よりやる後悔」を意味している。
この原則は傾向を示す(行動したほうが後悔が少なくなる傾向がある)ものであり、誰でも当てはまるわけではない。
また、車を買う、起業するなどのどのような局面でも成り立つものでもないだろう。
行動非行動の原則は買い物を例として説明されることが多いようなので、お気に入りのブランドバックを例にして、行動非行動の原則を考えてみよう。
もし買わないという選択をした場合、お金が節約できたのだから後悔しそうもないが、このバッグの在庫がなくなった場合はどうだろう。
前から欲しかったバッグなので、もう買うことができないと分かれば激しく後悔するだろう。
そして、同じバッグを持つ人を街で見かけるたびに買わない選択をした自分を長く責め続けるかもしれない。
一方、買う選択をした場合はどうか。
値段が高く、しかも頻繁に使うわけではないので、買った当初は後悔するだろう。
なぜなら、バックを得た代わりに失った、お金のことを考えてしまうからだ(もっと有意義にお金を使えばよかった)。
人は「得より損したくない」という「損失回避性」の傾向があるのでどうしてもこのように考えてしまうのだ。
しかし、徐々に欲しかったバッグを入手した喜びのほうが大きくなってくる。
それは、自分の所有物を高く評価するという「保有効果」が働くからだ。
こうして時間が経てば、買わない(行動しない)選択をするより、買った(行動する)ほうが満足度が高くなる。
しかし、起業の場合は、ブランドバッグと違い、形として残るものがない。
起業の場合も、店舗や事務所などの形あるものがあるではないかと思う人もいるだろうが、はたしてそういったものがブランドバッグと同じように保有効果が働くのかは疑問だ。
保有効果が働かないのなら、「やって後悔」するほうが、「やらない後悔」より大きくなる可能性が十分あり得るわけだ。
この点について、カズレーザーさんが次のようなことを言っているが、起業を考えた場合には同意できる発言である。
マイナビニュース:カズレーザー、“やらぬ後悔よりやる後悔”に異論「良い選択肢ではない」
起業の場合は、やるなら成功する必要がある。
成功といっても人によって考え方が違うので、画一的に言うことはできないが、金銭的な面に限って言えば、以前の年収水準を超えることが最初の段階では必要だと思う。
こうなれば、「起業したのに・・・」ということはあまり感じなくなるだろう。