なぜ最低賃金を引上げるのか?

最低賃金引上げについて不安に思う経営者も多いと思う。

最低賃金について、2019年6月の経済財政運営の基本方針において、「より早期に全国加重平均が1,000円(時給)」を目指すこととなった。

2020年6月の基本方針でもこの目標は堅持されたが、コロナ禍の影響もあり実質的には据置と言ってもいい上昇幅であった。

なお、最低賃金の全国加重平均は、2019年度で901円である。

 

ここしばらくは、毎年の最低賃金の引き上げが基本的な流れになりそうである。

実際、2016年度から2018年度まで毎年3%ほどの最低賃金の上昇が続いている。

 

なぜ、最低賃金上昇の流れは続いているのだろうか?

各国の経済的な豊かさは一人当たりのGDPで比較できる。

一人当たりのGDPは次のように計算する。

国民一人あたりのGDP=GDP / 人口

 

先進36カ国で構成されるOECD(経済開発協力機構)の2018年国民一人当たりのGDPにおいて、日本は36カ国中18位だ。

主要先進7カ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス イタリア、カナダ、日本)中では最下位から2番目である。

主要先進国のなかで、日本は1996年に2位(加盟国全体では7位)になったこともあったが、1990年後半から主要先進国の水準を下回るようになった。

この指標を見る限り、日本は経済的な豊かさでは中堅国になったといっていいだろう。

政府は経済的な豊さを日本が失いつつあることに強い危機感をもっている。

 

経済的な豊を実現するためには、より少ない労力でより多くの成果を生み出す必要があり、それを示す指標が労働生産性である。

労働生産性は次のように計算する。

労働生産性=GDP / 従業者数(又は就業者数×時間)

 

最低賃金が引き上げられる理由は、日本の労働生産性を高め、ひいては国の豊かさの基準である一人当たりのGDPを増やすためだ。

日本の人口は減少傾向にあるので、GDPを維持できるなら、必然的に労働生産性は増加するのではないかと思うかもしれない。

しかし、人口減により従業員が減少すればGDPも落ちる可能性が高いので、通常、労働生産性も低下する。

反対に、人口増加により雇用を増やし、より多くのGDPを生み出すことも可能、というか通常はこちらを目指すのが普通のことなのだろう。

移民を受け入れれば別だが、分子の従業員数をスピーディーに増加させることは難しいので、分母のGDPを増加する施策を政府はとったわけだ。

 

GDPを増加させるために最低賃金の引き上げが必要な理由は、GDPを分配面からみればわかる。

分配面からみたGDP=雇用者所得+営業余剰+固定資本減耗+(間接税‐補助金)

 

最低賃金の引き上げは上記の「雇用者所得」を増加させる施策である。

しかし、これからは人口減少が進むので、小幅の引き上げでは「雇用者所得」増加に対して効果的に機能しない可能性もある。

雇用者所得はざっくり言えば「雇用者数×平均賃金」で計算されるからだ。

つまり、人口減少で雇用者数はマイナスに働くので、賃上げにより、マイナス効果を上回るプラス効果が必要になる。

 

では、どこまで最低賃金はあげる必要があるのだろうか?

この点について、政府は前述したように全国加重平均1000円を目標にしているが、これでは少ないと考え、1300円から1500円の幅で最低賃金を引き上げる必要があると言う人もいるようだ。

 

ちなみに、毎年3%最低賃金を上昇させたとして、これを10年間続けた場合、2019年の最低賃金901円は2029年に1210円になる。

また、毎年5%の引き上げを10年間続けた場合は、1470円だ。

 

1000円でもきついのに、それ以上の最低賃金の引き上げを目指されたらたまったものではないと思う中小企業経営者も多いだろう。

しかしながら、現状では最低賃金引き上げの流れは思う以上に強いように感じる。

私たち中小企業経営者は、この環境変化に対する対応を急ぐ必要がありそうだ。

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