経営課題を先送りする理由
解決すべき経営課題がまったくない経営者はいないだろう。
しかし、その経営課題にスピーディーに向き合う経営者は少ない。
どちらかというと問題を先送りしてしまうことのほうが多いだろう。
その理由として、中小企業経営者は忙しく時間がないということがある。
しかしながら、いくら忙しいとしても、経営課題解決のための時間がまったくないということはないはずだ。
考えることは机に向かっていなくてもできるからだ。
結局、忙しくて時間がないことを理由にして、経営課題の解決を避けているのだろう。
先送りの本質的な理由は、心理学でいう学習性無力感からだろう。
学習性無力感は長期のストレスや回避困難な環境に置かれると、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなることだ。
経営者はあなたが思う以上にストレスにさらされている。
また、経営課題は一人で解決するには難しいということもある。
だから、すぐに深刻な状況に陥るのでなければ、その状況に慣れてしまうし、また、何をしても意味がないと思ってしまうのだ。
わかりやすく言い換えると、「住めば都」ということだ。
どんなところでも住み慣れてしまえば、そこが居心地よく感じてしまうように、何もしないことにある種の心地良さを感じてしまう。
これはとても恐ろしいことである。
経営環境の変化が激しい今の時代に、動かないことは非常にリスキーなのだ。
だから、学習性無力感が発動してしまうことを極力回避しなければならない。
では、この厄介な心理的な状況に陥らないためにはどうすればいいのだろう?
そのためには先送りするリスクをしっかり認識することである。
実は、中小企業の倒産(最大のリスクだ)の主な原因に「既往のしわ寄せ」がある。
「既往のしわ寄せ」とは経営課題を先送りにしたことで、問題が大きくなり倒産に至ってしまうことだ。
「既往のしわ寄せ」により倒産した経営者も最初は解決すべき経営課題と思っていただろう。
たとえば、ちょっとした売上の減少がそうだったのかもしれない。
しかし、先送りを何年も続けていくうちに、学習性無力感が発動してしまい、何もしないことに心地よさを感じてしまったのだろう。
経営課題をあなたが認識したのなら、いわば不発弾を抱えているのと同じだ。
速やかにその不発弾から信管を抜かなければならない。