会計スキルは経営の特効薬か?
本屋さんに行くと一般向けの「会計本」をよく見かける。
経営者や株式投資をする方だけでなく、スキルとして「会計」を勉強しようという人が増えているのだろう。
職業会計人として、会計が一般の方々にも認知されることは正直嬉しいことだ。
しかし、会計に過度に期待しすぎるのは良くない。
あくまでも、会計は経営の計器にすぎず、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
だから、会計を知りさえすれば経営が上手くいくということはない。
数字を使うと、信頼性が増すため会計で出た数字を盲目的に信じる人もいるだろう。
たとえば、損益分岐点分析がそうだ。
この分析をもとに目標利益を決定している経営者も多いだろう。
そして、目標利益を達成するために毎年苦労しているかもしれない。
なかには、利益目標が未達でがっかりする人もいるだろう。
これは仕方ないことではある。
なぜなら、その目標利益を達成るするため方法論を会計は教えてくれないからだ。
会計に傾きすぎると(私は「会計脳」と呼ぶ)、費用削減でばかり対応しようとする。
要するに、目標利益の達成を費用削減だけで実現しようとするのだ(その結果、目標を達成すれば万歳!?)。
もちろん、無駄な経費を削減しようという思考は責められるべきではない。
しかし、費用削減は限界がある。
無限に費用を削減することはできないからだ。
だから、売上の増加にも目を向ける必要がある。
残念ながら、売上増加するための方策は、会計スキルとは別物のマーケティングスキルだ。
そして、税理士や会計士はマーケティングスキルをサポートしていないところが多い。
経営者の多くは身近な専門家である税理士や会計士に経営相談することが多いそうだ。
しかしながら、経営者の70%は「販売力・営業力」を経営課題としているのだ。
経営者にとって重要な課題であるにもかかわらず、解決しないままでいるのだ。
経営はあなたが思う以上に複雑だ。
だから、たった一つのスキルをマスターすれば経営が上手く回るなどということはない。
逆に会計だけでなく、必要な知識やスキルをマスターすれば経営の舵取りは各段に上手くなる。